2018年11月24日土曜日

教えて狩野先生!①サイボーグにこころはあるの?

こんにちは。i-BOXです。
11月3日から14日までi-BOXで開催されていた「舩岳紘行×狩野宏明二人展『神話とサイボーグ』」。現在は会場を札幌にうつし、i-BOXには入りきらなかった大きな作品を中心に展覧会を行っています!
北海道教育大学岩見沢校油彩画研究室の舩岳先生と、奈良教育大学絵画研究室の狩野先生は、大学院時代の同期生。研究室では背中合わせで絵を描いていた時代もあったのだそう。神話を描く舩岳先生に対し、狩野先生が描くのは「サイボーグ」。先に終了したi-BOX会場では、狩野先生にいくつかの質問が寄せられました。今日と明日の二日間、狩野先生に寄せられた質問と、先生からの回答をご紹介します。回答を見てから作品を見るとちょっと印象も変わりますよ。今日は、毎月i-BOXに遊びに来てくれる、小学生の男の子からの質問です。

果たして心はあるのか!?

Q.《サイボーグには、こころはありますか?》
 ここに描かれているサイボーグには、こころがありますか?みんな、目と口と鼻はあるけど、こころがなさそうで、こわいです。

A.《身の回りの人や物と協力して心を作り上げていく人間の姿を描いています》
 ありがとうございます。確かに人の顔はあるけれど無表情で、電話や乳母車とくっついていて、どこか怖い感じがしますね。
 「心があるかどうか」。これは私の作品の最も大切なテーマの一つです。私は、自分の心や自分らしさというものは、自分の中だけで作られているのではなく、身の回りのたくさんの人々や、自然や人工物などすべてのものの影響を受けて生み出されたものだと実感しています。
 例えば、自分の持ち物で古くなったり役に立たなくなったものでも、なぜか捨てられないものはありませんか。他の人にとっては取るに足らないものでも、自分にとっては大切なものやなぜか気になるものがあって、それがすでに自分の一部のように感じられたり、自分の心がその物に染み付いているように感じられたりします。つまり、心というのは自分の中だけにあるものではなく、自分に影響を与えた全ての物や人の中にも染み出していると考えることができるのではないでしょうか。

 哲学者のアンディ・クラークは、このように常に身の回りの環境や他者と協力して心を作り上げていく人間のことを「生まれながらのサイボーグ」と呼んでいます。私が描くサイボーグたちも、一見奇妙な姿をしていて心がないように見えるかもしれませんが、身の回りの様々なものと融合して自分の心を作り上げていると考えています。

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現在展示中のHUG会場では、作品だけでなく、「エスキース」と呼ばれる作品の構想・下書きを見ることが可能です。狩野先生が絵を描く過程や、絵を描いていく中で頭の中がどうなっているのか、その一片を覗くことが出来ますよ。是非HUG会場へ足をお運びくださいね。
さて、明日は50年前に絵を描いていた、という女性からの質問にお答えいただきます。